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番外編 中国自動車業界2023年業界速報

所属分類: お知らせ 更新日:2024.02.20

 世界的なEVシフトや自動運転化の流れにより、中国企業が電気自動車(EV)をはじめとした新エネルギー車を武器に、中国国内だけでなく世界での競争力を高めている。2021年に中国第一汽車が、2023年には比亜迪汽車(以下、BYDと表記)が日本での自動車販売を開始するなど、中国の自動車メーカーの日本進出もはじまっている。今回は、そんな中国の自動車業界について調査した。

成長する中国の新エネルギー車企業

2023年、中国の自動車輸出台数は日本を抜き世界一位に

 中国の自動車輸出台数は、2021年以降、年間で100万台前後増加し、急激に拡大しており、2023年の中国の自動車輸出台数は491万台(前年比58%増)で過去最高となり、日本を抜き世界1位の自動車輸出国となった。(図表1)

図表1 中国・日本の自動車輸出台数推移(2018~2023年)
出典:中国自動車工業協会(CAAM),日本自動車工業会(JAMA)

 このような、中国の自動車輸出の増加をけん引しているのは、新エネルギー車である。中国での新エネルギー車の自動車輸出台数(図表2)は、2021年から連続して増加し、2023年1~10月の輸出台数全体に占める新エネルギー車の割合は25.4%と、自動車輸出台数の4分の1を占めた。

図表2 中国の自動車輸出台数推移
出典:中国自動車工業協会(CAAM)

 また、2023年上半期の世界でのEV自動車販売台数ランキング(図表3)では、中国のBYDがアメリカ・テスラを抑えて1位となっている。その他にも、GAC Aion(広州汽車集団)、Li Auto(理想汽車)など、ランキング20社中に中国の自動車メーカー8社がランクインしている。

図表3 2023年上半期の世界でのEV自動車販売台数ランキング
出典:World EV Sales Now 19% Of World Auto Sales! – CleanTechnica

新エネルギー車に力を入れる中国

 このような、世界での中国自動車メーカーの台頭には、政府による計画的な政策が背景にある。中国政府は、2009年ごろから新エネルギー自動車の産業を発展させるために多くの施策を実行している。

 消費者に向けては、新エネルギー車の購入を促す施策として、これまで「対象車両の購入補助金」「対象車両の取得税の免税措置」「ナンバープレートの取得緩和」などが実施されている。

 政府が積極的に後押しをすることで、中国国内の新エネルギー車の需要を促進し、産業が発展したのである。近年、中国の輸出台数が増加していることから、現在では中国国内で技術力を高める段階が過ぎ、中国国外で販売を伸ばす段階へと入ってきているといえる。

企業淘汰が進む中国自動車市場

 このように、新エネルギー車の分野で好調の中国だが、売上を伸ばし成長する企業がある一方で、新興自動車メーカーの倒産が目立っている。リスクモンスターチャイナが独自に収集している2023年度の倒産情報では、2010年以降に設立された、新興自動車メーカー、自動車関連メーカー7社が破産申立などの倒産手続きを行っている。(図表4)

 補助金などの政策に後押しされ、2000年以降多くの自動車メーカーが設立されたが、競合企業数が多く価格競争が激しくなったことや、研究開発に投資をして差別化を進める企業にシェアが集中し、資本力や技術力のない企業が業績悪化や倒産に至り、市場での選別や淘汰が進んでいると思われる。

図表4 直近の自動車関連企業の倒産情報

 2021年~2023年の新エネルギー自動車メーカーの小売台数TOP10(図表5)からは、電気自動車販売台数ランキングで1位だったBYDの販売台数は3年間で、5倍近く増加していることが分かる。一方で、2021年時点でランキング6位、7位であった、上汽乘用车と小鹏汽车は、その後は販売台数が伸び悩み2022年からはランキング外となっている。

 このように、販売台数のランキング上位に入った企業であっても、競争が激しく、市場で生き残っていくのは難しい。現在、中国には1,000社以上の新エネルギー自動車メーカーがあるため、採算が取れず資金繰りが悪化している、倒産懸念の高い企業は多く存在していると考えられる。

図表5 新エネルギー自動車メーカーの販売台数TOP 10

日系自動車企業の中国での苦戦

 これまでに記載した通り、中国では新エネルギー車購入への補助が手厚いため、新エネルギー車の需要が高く、EV自動車生産の技術力が高い中国国産メーカーの人気が高まっている。そのような中で、ガソリン車を得意とする日系メーカーは、中国国内で競争力を落としており、日系自動車大手3社の2023年の中国国内での新エネルギー車を含む新車販売台数は前年を下回った。

図表6 中国での日系メーカーの新車販売台数(2023年)

出典:各社公開情報

 トヨタ自動車は、中国国内での大規模な生産調整を進めており、2023年に中国生産の一部を停止しているほか、大規模なリストラを実施している。ホンダでも、従業員約900人のリストラを実施。三菱自動車は中国での車両生産からの撤退を発表している。このように、日系メーカー各社は中国市場で苦戦を強いられている。

まとめ

 中国では、国を挙げて新エネルギー車の推進がされていることから、国内での新エネルギー車の需要も高く、国内メーカーがシェアをおさえている。世界的な新エネルギー車の需要も増加しているため、中国の自動車輸出台数も年々増加しており、2023年度は日本を抑えて世界で1位の自動車輸出国となった。その一方で、中国国内では市場競争が激化しており、自動車関連企業の倒産も増加している。ガソリン車に強みのある日系メーカーは、新エネルギー車の需要が高い中国市場で苦戦しており、今後の事業転換が求められる。

 新エネルギー車の普及により、世界の自動車市場は大きな変革期を迎えている。今後、どのような展開となっていくのか、引き続き注目していきたい。

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2023年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。