海外経験あるビジネスマンの市場価値が高いワケ

執筆者: リスクモンスター株式会社 データ工場 主任アナリスト 石原孟2020.02.28

みなさん、こんにちは。さて、突然ですが、みなさんの会社では「働き方改革」への取り組みは進んでいますでしょうか?現在、「働き方改革」は、日本のビジネスマンの間で、関心の高い話題の1つです。今回は、「働き方改革」と「ビジネスマンの市場価値」について、日本からコラムをお届けします。

「働き方改革」とは?

「一億総活躍社会」を実現すべく、2015年に政府が提唱した取り組みのひとつです。少子高齢化が進み労働力人口が減少する中で、労働力不足を解消、労働生産性の向上を図るものです。今年4月には、関連法が施行されており、時間外労働の罰則規定等が設けられています。罰則規定は、まず大企業を対象に適用され、2020年4月以降は、中小企業にも順次適用されていきます。

厚生労働省

(出所:厚生労働省HP)

「働き方改革」の中でも長時間労働是正への関心は高く、企業の取り組み状況は、ニュースで報道されています。先日、ファミレス大手のすかいーらーくホールディングスは、大みそか午後6時から元日正午まで、「働き方改革」の一環として、グループ全体の8割の店舗を一斉休業する方針を発表しています。一部の大企業による「働き方改革」への取り組みが目立つ一方で、業務量等に大きな変化がないまま、時間外労働時間を制約する企業も一定数存在し、終わらない仕事をオフィス外で「サービス残業」する労働者の増加や時間外労働が問題になりにくい管理職への業務しわ寄せなどが、新たな社会問題として注目が集まっています。「一億総活躍社会」にむけて「働き方改革」の法整備は進みましたが、その実効性に懐疑的な声も少なくありません。

ビジネスマンの市場価値

「働き方改革」の機運が高まる中、企業では、不足する労働力を補うため、人材の確保に力を入れています。新卒採用だけでなく、中途採用も活発化しており、総務省「労働力調査」によると、2018年度の転職者数は329万人と、8年連続で増加し、直近10年では最大の水準に達しています。転職の中心となっているのは、35歳未満の世代であり、将来にわたって労働力として期待できる「若い」ビジネスマンを中心に人材流動が活発であることがうかがえます。

転職者数の推移)

(出所:総務省統計局)

海外経験のある人材

外務省「海外在留邦人実態調査」によると、海外に3ヵ月以上滞在する「在留邦人」の数は2017年10月1日時点で135万1,970人でした。中国に焦点を当てると、長期滞在する中国在留邦人は12万1,095人(永住者除く)であり、このうち9万8,615人が民間企業勤務者です。中国に進出している日本企業総数(拠点数)は、3万2,349社であり、国別では最も日本企業進出が盛んです。米中貿易摩擦など外部環境の悪化等を原因に、中国への日本企業進出増加は一服感があるものの、一定数の企業が、中国でビジネスを展開し続けていることがうかがえます。

海外在留邦人(世代・地域別)

(出所:外務省)

海外在留邦人(世代・地域別)から、40代(28万6,474人)が多いことがわかります。20代(16万3,153人)は世代別で最も少なく、海外在留邦人全体の1割程度におさまっています。日本企業のビジネス展開が最も盛んな中国を含むアジア圏においても、40代が多いことから、40代ビジネスマンが日本企業の活発な海外展開を支えている構図が読み取れます。

海外企業との取引が活発化する昨今の日本企業において、海外経験のあるグローバルな人材が求められています。また、現状の日本企業の中国進出状況、ビジネス展開を考慮すると、中国での在留経験がある人材が、より重宝されることは想像に難しくありません。独自の集計によると、中国在留邦人の民間企業勤務者9万8,615人のうち、20代は1万人未満であると推定され、 20代の若手ビジネスマンに限って言えば、海外在留経験、特に、中国在留経験がある者は少なく、その希少性の高さがうかがえます。

他国の言語・文化への理解、政治的・地理的・経済的違いを体感している「海外経験」を持つビジネスマンは、海外でビジネスを展開する日本企業において、重要な存在であることに間違いありません。 とりわけ若手ビジネスマンは、希少性の高さと今後の労働力としての期待から、他のビジネスマンに比べ、労働市場での価値が高いといえます。

先日、中国のスマートフォンメーカー大手のシャオミが、2020年に日本進出することを明らかにしました。日本国内外で、中国企業とのビジネス機会は多く生まれており、中国での実務経験あるビジネスマンへの需要の高まりと今後の活躍が期待されます。

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