第28回 中国における与信管理:業界分析⑤化学工業

第28回 中国における与信管理:業界分析⑤化学工業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は化学工業です。化学工業は、一般的に生産工程において、化学法がメインとなる装置産業のことを指します。化学工業にはⅰ化学鉱石鉱業、ⅱ化学原料・化学製品製造業、ⅲ化学繊維製造業、ⅳゴム・プラスチック製品製造業等が含まれます。

図1
図1

1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は40%前後で安定的に推移しています。最上位層平均は、2011年以降低下傾向で推移しているものの、依然として50%台を維持しています。最下位層平均においては、概ね15%前後での推移を続けています。 自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均25%、全体平均40%、最上位層平均45%と下位層よりも上位層の方が、差が小さい様子が表れています。
 また、当座比率は数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均57.2%、全体平均72.0%に対して、上位層平均102.9%、最上位層平均141.0%と上位層における水準が高くなっています。斯業界では、上位層における資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。

図2
図2

2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきたが、近年はやや長期化の傾向が窺えます。最下位層平均は増減を繰り返しながら、徐々に長期化し、過去10年間で最長となっている。一方で、最上位層平均は全体平均と同様に安定推移しており、最下位層平均の回転期間に比べ、全体平均と最上位層平均の差は、僅差となっています。
 2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ24日、51日、400日とやや長期化の傾向が窺えます。

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均103日、全体平均51日、上位層平均33日と、下位層と上位層とでは、2カ月程度の回収期間の差が生じていることが表れています。
 総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.3回、全体平均0.5回、上位層平均0.7回、最上位層平均1.0回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は10%前後を推移しながらも、2012年の12.2%をピークに徐々に低下している様子が窺えます。最上位層平均においては、全体平均と同様の推移ながら、依然として20%以上の水準を維持しています。一方で、最下位層平均では、2011年にプラスに転じたものの、再びマイナスに転落し、マイナス幅は5.0%に達しています。
 2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ20.6%、7.9%、-5.0%と、過去10年間においては最低に近い水準となっています。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-5.0%、下位層平均4.4%、全体平均7.9%、上位層平均14.2%、最上位平均20.6%と、業界内における採算性の良否がはっきりと分かれている様子が窺えます。
 総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-2.2%、全体平均2.0%、上位層平均3.6%、最上位層平均5.1%となっており、下位層では赤字企業が多く、収益効率が非常に低い様子が表れています。
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