第24回 中国における与信管理:業界分析①冶金産業

第24回 中国における与信管理:業界分析①冶金産業

リスクモンスターチャイナではこのたび中国で初めて、業界ごとの分析結果をまとめた「中国版 業界別審査ノート」を発刊しました。今回はその中から「冶金産業」について取り上げたいと思います。
 冶金産業には、ⅰ 鉄系金属鉱採掘・選別業、ⅱ 非鉄金属鉱採掘・選別業、ⅲ 鉄系金属製錬・圧延加工業、ⅳ 非鉄金属製錬・圧延加工業等が含まれます。国家統計局の公表データによると、2017年において、斯業界で最も市場規模(売上高)が大きな業種分類は、鉄系金属製錬・圧延加工業(6兆7,430億元)であり、続いて非鉄金属製錬・圧延加工業(5兆5,142億元)、鉄系金属鉱採掘・選別業(5,723億元)、非鉄金属鉱採掘・選別業(5,301億元)の順となっています。中でも、鉄系金属製錬・圧延加工業と非鉄金属製錬・圧延加工業の規模が大きく、2業種で全体の約90%の市場規模を有しています。推移としては、非鉄金属鉱採掘・選別業の売上高において、やや減少が見られるものの、それ以外、売上高および税引前当期利益の両方で拡大している様子が窺えます。

図1
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1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について全体平均は40%前後で安定的に推移しており、最上位層平均は、2011年以降低下傾向で推移しているものの、依然として50%台を維持しています。一方、最下位層平均においては、15%前後での推移を続けています。
 自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30%、全体平均40%、上位層平均45%と業界内の差が比較的小さい様子が窺えます。
 当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均45.6%、全体平均54.2%、上位層平均68.4%となる中、最上位層平均では116.1%と高い水準となっており、斯業界では、最上位層において突出して資金が潤沢な企業が存在していることが窺えます。

図2
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2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきましたが、近年ではやや長期化の傾向が窺えます。最上位層平均は全体平均と同様に推移する一方、最下位層平均は変動が大きく、2008年から2010年の2年間と、2015年から2017年の2年間において長期化の傾向が顕著に表れています。売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均100日、全体平均47日、上位層平均26日と差異が大きく、斯業界における売掛金の回収効率は企業によって大きく異なっていることがわかります。

図3
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3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、最上位層平均や全体平均では、低下傾向での推移を続けていましたが、近年では下げ止まり感が表れ、横ばい推移となっています。最下位層平均においては、マイナス値での推移となっており、売上高総利益段階で赤字化している企業が多いことが表れています。

図4
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売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できますが、2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均にてマイナス値となっているほか、下位層平均0.3%、全体平均2.0%、上位層平均3.7%と全体的に低水準であり、業界内での採算性の低さが表れています。
 与信管理を行う上で、対象企業の分析はもちろん大切ですが、業界動向と比較してどうかという視点も重要ですので、お取引先業界がこの業界の場合はこちらを参考にしてみて下さい。

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