第7回 2016年どうなる!?中国企業倒産トレンド

第7回 2016年どうなる!?中国企業倒産トレンド

2015年度の国内総生産(GDP)が前年比6.9%増と、25年ぶりの低い伸び率となり、経済の停滞が懸念される中国ですが、2016年は、企業倒産が増加するのでしょうか。また、どの業界に注意すべきなのでしょうか。今回は、2016年の倒産トレンドを捉えるために、現在の金融状況や経済状況に触れてみたいと思います。

増加する銀行不良債権

中国の銀行は、貸付先の返済能力に基づいて「正常」、「関注」、「次級」、「可疑」、「損失」の5段階に分類しており、そのうち「次級」「可疑」「損失」を不良債権と位置付けています。これは、日本の金融機関における「正常先」、「要注意先」「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」の債権分類にきわめて近い考え方といえます。
 中国銀行業監督管理委員会が公表した資料によると、2015年度末における商業銀行全体の不良債権額は1兆2,744億元(約23兆円)で、17四半期連続の増加となっており、2012年前半に比べると約3倍に増大しています。不良債権比率は1.67%となり、リーマンショックが起きた2008年以来の高水準となっています。
 日本の銀行全体における2015年3月末の不良債権額が約9兆1,500億円、不良債権比率が1.64%(出所:(株)日本金融通信社、銀行バーチャルIR)であることを考慮すると、不良債権比率こそ同水準であるものの、不良債権額では、日本の倍以上の規模となっています。中国では日本に比べて金融機関から資金調達する文化が根付いておらず、銀行から資金支援を得られる企業が比較的大規模かつ優良企業であることを考えれば、中国における不良債権規模の実態は、表見数値以上に大きいと捉えることができます。
 中国においては、2016年度も引き続き、銀行の不良債権が増加することが予想されるため、自社の保有する債権が不良債権にならないように、取引先の業況等に十分に注意を払う必要があるといえます。

不良債権額、不良債権比率グラフ

素材産業の「ゾンビ企業」

昨年12月に李首相が「今後根絶する」と表明した「ゾンビ企業」の行方も2016年は注目が必要です。
 ゾンビ企業とは、本来であれば倒産してもおかしくないほど赤字を垂れ流しているにも関わらず、銀行や政府の支援によって生き延びている企業を指します。
 ゾンビ企業の多くは中国国有企業であり、業種としては、鉄鋼、セメント、石炭といった素材産業が中心です。需要が無いにも関わらず、ものを作り続けた結果、生産過剰状態となり、業績が悪化しているのが典型例です。例えば、昨年末には、河北省の大手鉄鋼メーカーである唐山松汀鋼鉄が、資金難を理由に生産停止になりました。また、河北省の鉄鋼企業は相次ぎ人員削減を行っており、石家荘市、武安市などでは半分以上の鉄工所が10%~30%超の従業員の削減を余儀なくされています。
 鉄鋼業界の他には造船、太陽電池、石油化学などに、こうした生産過剰により業績が悪化している企業が多く存在するため、これら業界との取引時には注意が必要です。

広東・深圳製造業の業績悪化

製造業の業績悪化が著しく見られる地域として、広東省東莞市が挙げられます。東莞市には、電子部品や小型家電、玩具、家具、アパレルなどの工場が多く集積していますが、直近1年間で約4,000社が倒産したと言われています。これは人件費の高騰を理由に、より安価な他国へ工場が移転していることが原因です。
 近隣の深圳市では、スマートフォン関連の部品メーカーが、経営破綻や工場閉鎖に追い込まれています。2015年には、中天信電子有限公司や福昌電子技術有限公司といった部品・OEMメーカーが倒産に至りました。市場が頭打ちとなった中国スマートフォンメーカーが激しい価格競争を行い、その結果サプライヤーである部品メーカーに対して、支払サイトの延長などを要求したことで資金繰りが圧迫され倒産したと言われています。

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