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第50回 中国における与信管理:業界分析 情報通信サービス業

所属分類: 与信知識コラム 更新日:2023.04.19

 今回は以前、業界分析で取り上げました情報通信サービス業についてビジネスモデルや与信管理のポイント、業界の特徴について触れていきたいと思います。

1、ビジネスモデル

 情報通信サービス業は、国の重要分野と位置付けられており、中国の情報通信産業のソフト面において重要な役割を担っています。中国政府は、様々な振興政策や通信インフラの整備を進めており、近年、斯業界は大きな躍進を遂げています。斯業界は、電気通信業、ソフトウェア・情報サービス業の2分野から構成されています。

(1)電子通信業

 電気通信業は、固定回線、移動通信などを利用した電気通信サービスを提供しており、中国移動、中国電信、中国聯通の通信キャリア大手3社が業界の中心となります。中国政府は、2001年以降から段階的に電気通信業の改革政策を実施しており、現在、中国国内の通信環境は飛躍的に向上しています。

(2)ソフトフェア・情報サービス業

 ソフトウェア・情報サービス業は、受託開発ソフトウェア、情報処理などのサービスを提供しており、インターネットを中心とする現代のライフスタイルを支えています。ソフトウェア・情報サービス業は、中国で最も研究開発費が投入されている業種であり、近年では、5G、ビッグデータ、人工知能などの次世代情報技術分野の研究開発が活発化しています。

2、与信管理のポイント

 情報通信サービス業のうち、ソフトウェア・情報サービス業における与信管理のポイントとして、以下の点が挙げられます。なお、電気通信業は通信キャリア大手3社(中国移動、中国電信、中国聯通)が中心であり、各社の事業規模、中国政府の支援姿勢からみて与信上の信用リスクが低位であることから、本項目においては割愛します。

(1)技術力の有無

 ソフトウェア・情報サービス業などのインターネットを活用したネットビジネスは、新規参入障壁が低く、類似サービス・模倣サービスが生じやすいという特徴を有しています。競争力維持のためには、他社とのサービス差別化、高品質サービスの開発、技術力の高い人材の確保が鍵となります。ソフトウェア・情報サービス業との取引に際しては、内容、他社との競合状況、開発部門の人員状況などを確認する必要があります。

(2)重層下請構造

 ソフトウェア・情報サービス業のうち、SI案件などでは、重層下請構造となっており、元請企業と下請企業が存在しています。下請企業は、元請企業からのコスト削減や納期短縮の圧力を受けやすいという特徴を有しています。ソフトウェア・情報サービス業との取引に際しては、取引先が元請けか下請けかを確認するほか、サプライヤーからエンドユーザーの商流を分析し、案件納期や運転資金の負担有無等を確認する必要があります。

(3)業績推移

 ソフトウェア・情報サービス業が提供するサービスは、無形である場合が多く、成果物の実態を把握しにくい業種です。他業種と比べ、書類上で取引操作を行うことが容易であり、架空取引等の不正が発生しやすい業種でもあります。特に、新興企業においては、自社の成長性をアピールするために売上高を水増しする場合があります。ソフトウェア・情報サービス業との取引に際しては、取引相手の業績推移が異常に変動していないか、実態のない取引をしていないかなどに注意する必要があります。

3、業界の特徴

(1)付加価値の高速成長

 2021年における情報技術サービス業の付加価値は、4兆3,956億元(前年比+17.2%)であり、第三次産業の業界において上位にあり、サービス業全体の成長率を9ポイント上回っています。また、ソフトウェア業の従業員数は809万人(同+7.4%)、賃金総額は同+15.0%となっており、近年、人員規模が大幅に拡大しています。

(2)輸出業務が好調

 2021年におけるソフトウェア業の輸出額は、521億ドル(前年比+8.8%)であり、そのうち、ソフトウェアアウトソーシングサービスの輸出額は149億ドル(同+8.6%)、組込みソフトウェアの輸出額は194億ドル(同+4.9%)といずれも増加しています。

(3)各業界におけるDX推進

 2021年、工業・情報化部は、『「十四五」情報化と工業化深度融合発展計画』、『「十四五」ソフトウェア・情報技術サービス業発展計画』、『「十四五」ビッグデータ産業発展計画』を発表し、デジタル化の普及に伴い、情報技術を活用した製造業の知能化を実現することが今後数年間の発展目標と表明しました。政策の後押しにより、工業インターネットインフラの整備が加速し、産業アプリケーションの大規模な応用の基盤が確立されることが期待されます。また、情報通信技術産業のハードウェア重視の現状が改善され、「ソフトウェアがすべてを定義する」時代が到来すると期待されます。他にも監督管理層は、データの安全を重要視することを重点タスクの一つとしており、データセキュリティ産業の成長が期待されます。

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