中国の住宅事情

執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎2015/12/16

中国の男性は、結婚前にマンション購入が必須であり、にも関わらず住宅価格はバブルで高騰しているとも言われます。今回は、中国の住宅事情について紹介します。

価格相場

中国

※2015年11月度

都市 1㎡価格
(元)
1㎡価格
(万円)
前年比
(%)
北京 34,925 66.4 8.11
上海 36,143 68.7 12.46
深圳 41,139 78.2 34.75
天津 10,927 20.8 2.57
杭州 16,104 30.6 0.55
重庆 6,937 13.2 -3.99
广州 17,001 32.3 -2.12
成都 7,771 14.8 -3.19
大连 10,029 19.1 -8.94
百都市平均 10,899 20.7 2.93

※中国指数研究院 百城价格指数(2015年11月)

日本

※2015年度

都市 1㎡価格
(元)
前年比
(%)
東京都区部 87.3 0.9
東京都下 64.8 10.5
神奈川県 61 5.9
千葉県 50 5.0
埼玉県 54.4 5.9
大阪府 53.5 7.3
兵庫県 52.6 0.0
和歌山 37.8 5.3
全国平均 60.3 3.8

※不動産流通推進センター2015不動産業統計集

中国の主要都市部を一平米の単価を日本と比較したところ、中国100都市の平均が10,899元(約20.7万円)に対して、日本の全国平均は60.3万円、約3倍の差があります。ただし、北京や上海、深センなどの都市部は3.5万~4.1万元(66.5万円~78.2万円)であり、日本の首都圏と変わりません。
 実は中国の床面積は日本と考え方が異なり、建築面積としてバルコニーや共用部であるエレベーターや廊下などを按分して加算するため、実質の床面積は日本の70~80%程度になります。日本の床面積基準で考えると75㎡のマンションが、日本の東京都区部で6,547万円に対して、上海ではそれを超える6,870万円(100㎡で計算)です。
 また、中国では地域差が大きく、重慶は北京・上海・深センの1/5以下です。上海の地区別の平均単価は以下図の通りです。日系企業の駐在員が住んでいる長寧区は48,784元/㎡で、賃貸の場合でも、100㎡で1万~1.5万元(19万~28.5万円)かかりますので駐在員の維持コストが高いことがよく分かるかと思います。

上海地区別価格

房天下fang.comより(2015年11月)

上海地区別価格

平均給与との比較

都市 1㎡価格
(元)
1㎡価格
(万円)
前年比
(%)
平均年収
(元)
平均年収
(万円)
北京 34,925 66.4 8.11 80,256 152.5
上海 36,143 68.7 12.46 81,288 154.4
深圳 41,139 78.2 34.75 80,184 152.3
天津 10,927 20.8 2.57 66,096 125.6
杭州 16,104 30.6 0.55 79,836 151.7
重慶 6,937 13.2 -3.99 78,744 149.6
広州 17,001 32.3 -2.12 79,608 151.3
成都 7,771 14.8 -3.19 77,472 147.2
大連 10,029 19.1 -8.94 72,084 137.0

※年収はホワイトカラー対象

マンション価格をホワイトカラーの平均給与で比較した場合、年収は日本の3分の1程度にも関わらず、北京や上海などの都市部は日本と同等のマンション価格のため、日本より3倍ほど高いことになります。上海で100㎡のマンションを購入するには、年収の44.5年分(361万元 ÷ 年収8.1万元)と非現実的な数値となります。ローンを組むにしても、購入時には最低30%の頭金が必要のため、その金額だけでも年収13年分です。

マンション購入の実態

この非現実的な数値はなぜでしょうか?主に2点理由があると思います。
 1点目として、中国都市部マンションは住宅目的ではなく、投資目的での購入が多いためです。投資目的で購入しているのは、一般的なビジネスマンではなく、日本人給与相当またはそれ以上の給与をもらっている高額給与所得者です。彼らはマンションも2,3個持っているのが一般的です。上海でも郊外の嘉定や青浦に行けば、都市部の半額程度ですので、住宅目的で購入する上海のビジネスマンはそういった場所で購入します。
 2点目は、親からの支援が大きいためです。一人っ子政策のため、親の子に対する愛情が大きく、頭金や全額を親が支払うケースもあります。都市部に住んでいる親は、マンションが安い頃から複数購入していた人も多く、結婚する子どものために手持ちマンションの1つを売ることがあります。
 ただし、こうした価格は北京・上海など都市部であり、地方だともう少し現実的な数値になります。大連の場合なら、100㎡でも約100万元、年収の14年分です。中国東北地方に住んでいる私の知人(20代後半)は3,500元/㎡ × 90㎡ 計31.5万元(約600万円)で購入していました。しかも、頭金約10万元は全部自分で支払ったそうです。通常の会社勤務以外にアルバイトを複数掛け持ちし、毎月5,000元を貯金し続けていたそうです。そういう中国人がいることも事実です。

その他独自の制度

最後に中国独自の制度について2つ紹介します。

1. 70年制度
 中国では、土地が国家の所有物であり、マンションを購入しても土地の使用権が与えられるだけです。住宅用土地の使用権は70年で、日本のように永遠の資産ではありません。この制度が開始し、70年を経過した物件が無いため、今後どうなるかは不明ですが、中国人の多くはあまり気にしていないようです。なお、制度上は70年を経過する前に延長契約を締結すれば継続して利用できることになっています。ただし、中国のマンションは耐久性が低く70年も持たない印象です。

2. 住宅積立金制度
 中国の会社員は住宅購入積立金制度があり、上海の場合は、毎月給与のうち7%が会社負担、7%が個人負担として積み立てられます。7年勤務すると年収1年分の積立金が溜まりますので、それを頭金に使うことができます。ただし、この積立金制度には問題があり、勤務地(税金を支払った都市)でしか使うことができず、例えば上海で勤務した人が故郷の安徽省で家を購入しようとしても使用できません。

以上

※ 参考データ
・中国指数研究院 百城价格指数(2015年11月)
・房天下fang.com (2015年11月)
・智联招聘 2015年春季中国雇主需求与白领人才供给报告
・公益財団法人不動産流通推進センター 2015不動産業統計集

※ 1元=19円として日本円計算をしています。
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