第31回 中国における与信管理:業界分析⑧食品産業

第31回 中国における与信管理:業界分析⑧食品産業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は食品産業です。食品産業は、農業、漁業、牧畜業、林業や化学工業の製品または半製品を原料として、食品や半製品を製造、抽出、加工をしています。国家統計局の公表データによると、2017年において、斯業界で最も市場規模(売上高)が大きな業種分類は、農業副食品加工業(6兆4,449億元)であり、食品製造業(2兆3,118億元)の3倍近い規模を有しています。農業副食品加工業、食品製造業共に、市場規模及び税引前当期利益の両方で拡大している様子が窺えます。

図1
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1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は30%台から徐々に上昇し、近年は40%で安定的に推移しています。最上位層平均は、2009年をピークに低下傾向で推移しているものの、依然として50%台を維持しています。最下位層平均においては、概ね15%前後での推移を続けています。
自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30%、全体平均40%、上位層平均45%と業界内の差が比較的小さい様子が窺えます。 当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均55.5%、全体平均73.1%、上位層平均94.9%、最上位層平均113.1%と上位層における水準が高くなっています。斯業界では、業界内の資金の潤沢度合いにばらつきが大きいことが表れています。

図2
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2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきたが、近年ではやや長期化の傾向が窺えます。最上位層平均は全体平均と同様に安定推移する一方、最下位層平均は変動が大きく、2012年まで大幅な短期化が進んだ後、2017年まで徐々に長期化が進んでいます。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ19日、41日、157日といずれも長期化の傾向が表れています。 

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均73日、全体平均41日、上位層平均27日と、上位層では約1か月の回収サイトに対して、下位層では2か月以上となっており、売掛金の回収効率に差が生じています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.5回、全体平均0.9回、上位層平均1.3回、全体としての資産効率は低くないものの、下位層において資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、2009年と2015年に急激な低下が生じましたが、いずれも翌年には回復に転じています。全体平均では概ね10%前後での推移が続いており、最上位層平均では20%~30%の間での推移となっています。一方、最下位層平均においては、常にマイナス値での推移となっており、売上高総利益段階で赤字化している企業が多いことが表れています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ23.7%、10.3%、-4.0%と改善傾向が続いています。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-4.0%、下位層平均5.1%、全体平均10.3%、上位層平均17.1%、最上位平均23.7%と、業界内における採算性の良否がはっきりと分かれている様子が窺えます。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.8%、全体平均3.5%、上位層平均7.7%、最上位層平均8.5%となっており、下位層においては収益効率が低い様子が表れています。
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