第30回 中国における与信管理:業界分析⑦繊維工業

第30回 中国における与信管理:業界分析⑦繊維工業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は繊維工業です。繊維工業は、繊維原料加工、綿、ウール、麻、絹等の紡織業が含まれます。国家統計局の公表データによると、2017年における斯業界の市場規模(売上高)は、3兆7,977億元(前年比+3.7%)となりました。また、税引前当期利益は、1,977億元(前年比+3.6%)となっており、売上高および税引前当期利益の両方で拡大している様子が窺えます。

図1
図1

1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は上昇基調にあり、近年は40%台で推移しています。最上位層平均は、2013年をピークにその後は低下したものの、依然として50%台を維持しています。一方、最下位層平均においては、2011年以降はほぼ15%で安定推移を続けています。
自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30%、全体平均40%、上位層平均45%と下位層よりも上位層の方が、差が小さい様子が表れています。
当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均56.6%、全体平均72.8%、上位層平均100.1%、最上位層平均124.9%と上位層における水準が高くなっています。斯業界では、上位層における資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。

図2
図2

2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は徐々に短期化が進んできており、回収期間は概ね1か月となっています。最上位層平均は15日前後で安定的に推移しています。一方で、最下位層平均は変動が激しく、2009年をピークに短期化が進んできましたが、2015年以降は再び長期化の傾向が窺えます。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ14日、35日、90日とやや長期化の傾向が窺えます。

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均55日、全体平均35日、上位層平均22日となっており、業界全体で概ね1~2か月程度での回収期間であることが表れています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.3回、全体平均0.7回、上位層平均1.2回、最上位層平均1.8回と、全体平均を境に資産効率に大きな差が生じている様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均はほぼ7%台の推移を続け安定的に推移してきましたが、2017年は低下となりました。最上位層平均は、概ね15%前後での安定推移を続けています。一方、最下位層平均においては、常にマイナス値での推移となっており、売上高総利益段階で赤字化している企業が多いことが表れています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ13.6%、4.9%、-8.0%と過去10年間で最低水準となり、収益性の低下が窺えます。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-8.0%、下位層平均-0.5%、全体平均4.9%、上位層平均8.4%、最上位平均13.6%と、下位層に赤字企業が多く、業界全体としても採算性が低い様子が表れています。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-0.4%、全体平均2.3%、上位層平均4.1%、最上位層平均6.5%となっており、下位層における収益効率が非常に低い様子が窺えます。
自社のお取引先について信用調査を行った際、この業界の状況と比較してみましょう。

書籍キャンペーン実施中!(先着50社様 )

弊社では企業の取引リスクに対する意識調査を行っております。
ご協力いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
下記アンケートにご回答頂いたお客様に「中国版業種別審査ノート」を贈呈いたします!
アンケートURL:https://krs.bz/rismon/m?f=1739

中国版業種別審査ノート

本書籍は中国における主要15業種を選定し、業界ごとの分析結果を日中両言語に纏めました。
中国企業との取引や与信管理の観点のみならず、業界ごとに分析することは中国経済、中国企業を知る上でも有用となります。

中国企業信用調査サービス お問い合わせ 利墨メルマガ