第34回 中国における与信管理:業界分析⑪建設業

第34回 中国における与信管理:業界分析⑪建設業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は建設業です。建設業は、土木工事、住宅建設、設備設置、工事調査設計作業を行う生産部門を指し、ⅰ 住宅・土木工事、ⅱ 建築据付業、ⅲ 建築装飾業・その他建築業等が含まれます。

2017年における斯業界の付加価値は5兆5,689億元(前年比+4.3%)であり、成長率は国内総生産額(GDP)を2.6ポイント下回っています。資格を有する全国の一般的な請負業者および専門の請負建設業者の2017年における利益は7,661億元(同+9.7%)であり、その中で中国の国有企業の利益は2,313億元(同+15.1%)となっています。

図1
図1

1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は20%~30%で安定的に推移しています。最上位層平均は、2010年をピークに低下傾向で推移し、近年は40%程度での推移を続けています。最下位層平均においては、2010年に大幅改善したものの、その後は徐々に低下し、10%程度での推移となっています。

自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均13%、全体平均30%、上位層平均35%と、下位層において自己資本が脆弱な状態が表れています。

当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均60.3%、全体平均64.0%に対して、上位層平均88.3%、最上位層平均115.3%と、最上位層の水準が高く、斯業界では、最上位層における資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。

図2
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2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね100日前後で安定的に推移してきました。最下位層平均は乱高下を繰り返しながら、不安定な推移を続けています。一方で、最上位層平均は全体平均と同様に安定推移しており、最下位層平均の回転期間に比べ、全体平均と最上位層平均の差は、僅差となっています。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ38日、92日、240日と、全体平均と最下位層平均において、短期化の傾向が窺えます。

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均171日、全体平均92日、上位層平均86日と、ほぼ3か月以上の回収期間となっており、斯業界における売掛金の回収効率は低い状態となっています。

総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.3回、全体平均0.5回、上位層平均0.6回、最上位層平均0.8回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は5%台で安定推移しています。最上位層平均においては、2014年に大幅に低下し、その後も10%未満での推移が続いています。最下位層平均では、全体平均と同様に安定推移ではあるものの、1%以下での低調な推移となっています。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ8.6%、5.7%、1.0%と、全体平均と最下位層平均においては改善傾向が表れています。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均1.0%、全体平均5.7%、最上位平均8.6%と採算性は低いものの、業界内における当該指標の乖離は小さい様子が窺えます。

総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-0.8%、全体平均2.2%、上位層平均3.5%となっており、下位層では赤字企業が多く、業界全体でも収益効率が低い様子が表れています。

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