第33回 中国における与信管理:業界分析⑩医薬製造業

第33回 中国における与信管理:業界分析⑩医薬製造業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は医薬品製造業です。医薬品製造業には、ⅰ 化学薬品製造業、ⅱ 漢方薬材及び漢方製剤業、ⅲ 動物用医薬品製造業、ⅳ バイオ医薬品製造業、ⅴ 衛生材及び医薬用品製造業等が含まれます。2017年において、斯業界で最も市場規模(売上高)が大きな業種分類は、化学薬品製剤製造業(8,341億元)であり、続いて漢方製剤生産業(5,736億元)、化学薬品原薬製造業(4,992億元)、生物薬品製造業(3,311億元)、衛生材及び医薬用品製造業(2,267億元)、漢方薬飲用加工業(2,165億元)の順となりました。中でも、化学薬品製剤製造業の規模が大きく、斯業界における約30%の市場規模を有しています。いずれの業種においても市場規模は拡大しており、漢方製剤生産業を除く全ての業種で10%以上の大幅な伸長が見られます。

図1
図1

1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は40%~50%で安定的に推移しています。最上位層平均は、2012年、2013年に70%に達したが、その後は50%台で落ち着いて推移しています。最下位層平均においては、15%前後での推移を続けています。

自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30%、全体平均40%、上位層平均45%と業界内の差が比較的小さい様子が窺えます。

当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均67.4%、全体平均89.1%となり、上位層平均では110.0%、最上位層平均では128.7%となっており、斯業界では上位層における資金の潤沢な度合が高いことが窺えます。

図2
図2

2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきましたが、近年ではやや長期化の傾向が窺えます。最上位層平均は全体平均と同様に安定推移しており、最下位層平均の回転期間に比べ、全体平均と最上位層平均の乖離は小さくなっています。一方で、最下位層平均は、2010年に大幅な短期化が見られたが、その後増減を繰り返しながら長期化し、2009年並の高水準に達しています。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ32日、72日、300日となっており、最下位層平均を中心に長期化の傾向が窺えます。

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均106日、全体平均72日、上位層平均49日と差異が大きく、斯業界における売掛金の回収効率は企業によって大きく異なっていることが分かります。

総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.2回、全体平均0.5回、上位層平均0.9回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は20%以上を維持しながら推移しています。最下位層平均では、10%前後となるものの、最上位層平均においては、ほぼ40%以上の水準で推移しており、全体的に利益率の高い業界であることが窺えます。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ36.6%、20.0%、3.9%と、過去10年間において最低水準に落ち込んでいます。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均において3.9%と低水準であるものの、下位層平均としては二桁の水準を確保しており、相応の利益水準を確保できている企業が多い様子が窺えます。

総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.9%、全体平均6.9%、上位層平均9.7%となっており、全体平均での収益効率に比べ、下位層の収益効率の低さが目立っています。

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