第29回 中国における与信管理:業界分析⑥情報通信サービス業

第29回 中国における与信管理:業界分析⑥情報通信サービス業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は情報通信サービス業です。情報通信サービス業は、ⅰ電気通信業、ⅱソフトウェア業及び情報サービス業の2種類に分類されます。国家統計局の公表データによると、2017年において、斯業界では、情報サービス及びソフトウェア業の市場規模が大きく、電気通信業の4倍以上の規模となっています。詳細な業種分類で見ると、最も市場規模が大きい業種は、情報技術サービス業であり、続いて、ソフトウェア業、移動電気通信業、組込ソフトウェア業、固定電気通信業の順となりました。いずれの業種においても市場規模は拡大しており、情報技術サービス業、ソフトウェア業を中心に業界全体で拡大傾向にあることが窺えます。

図1
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1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は、2009年をピークに低下基調での推移となり、近年は35%程度を維持しています。最上位層平均は2014年に大幅に低下し、最下位層平均も同様に大幅な低下が見られ、その後はそれぞれ45%程度、10%程度で推移を続けています。

自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均10%、全体平均35%、最上位層平均45%と下位層よりも上位層の方が、差が小さい様子が表れています。

当座比率は数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均65.2%、全体平均81.2%となり上位層平均では123.4%、最上位層平均147.9%となっており、斯業界の上位層においては、資金が潤沢な企業が多く存在していることが窺えます。

図2
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2.資産効率

過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は、2013年から長期化が進み60日前後での推移となっています。最上位層平均では、20日~30日で安定的に推移しています。一方、最下位層平均では変動が大きく、2013年~2016年における長期化が顕著に表れています。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ28日、55日、157日と短期化の傾向が窺えます。

図3
図3

売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均77日、全体平均55日、上位層平均38日となっており、概ね2カ月前後の回収期間となっている一方で、最下位層平均は5カ月を超え、回収効率が非常に低い状態となっています。

総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.7回、全体平均1.0回、上位層平均1.3回と、全体平均を境に資産効率の良否が分かれている様子が表れています。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は2013年まで20%を維持していたものの2014年に大幅に低下し、その後は15%前後での推移となっています。最上位層平均及び最下位層平均でも同様に2014年に大幅な低下が生じており、低下基調での推移が続いています。

2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ26.5%、13%、-0.3%と、過去10年間における最低水準となっています。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-0.3%、下位層平均6.1%、全体平均13.0%、上位層平均20.9%、最上位平均29.5%と、業界内における採算性のばらつきが大きい様子が表れています。

総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-0.4%、全体平均2.4%、上位層平均3.5%となっており、下位層における収益効率が非常に低い様子が窺えます。

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