第27回 中国における与信管理:業界分析④運輸倉庫・郵便業

第27回 中国における与信管理:業界分析④運輸倉庫・郵便業

今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は運輸倉庫・郵便業です。運輸倉庫・郵便業には、ⅰ鉄道業、ⅱ道路運送業、ⅲ水運業、ⅳ民間航空業、ⅴパイプ運輸業、ⅵ倉庫業、ⅶ郵便業等が含まれます。

1.安全性

 過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は40%前後で安定的に、推移しています。最上位層平均は、2012年以降低下傾向で推移しているものの、依然として45%程度を維持しています。最下位層平均においては、概ね10%前後での推移を続けています。
 自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均10%、全体平均35%、最上位層平均45%と下位層よりも上位層の方が、差が小さい様子が表れています。
 また、当座比率は数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均52.4%、全体平均72.0%に対して、上位層平均101.8%、最上位層平均133.0%と上位層における水準が高くなっています。斯業界では、上位層における資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。

図1
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2.資産効率

 過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は50日台~120日まで大幅な変動を見せ、近年は90日程度で推移しています。最下位層平均は2012年に大幅な長期化となり、9カ月以上の回収期間で推移しています。一方で、最上位層平均は安定的な推移となっており、2011年以降30日前後を維持しています。
 2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ32日、90日、277日とやや長期化の傾向が窺えます。

図2
図2

 売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均171日、全体平均90日、上位層平均50日と、下位層平均においては、3カ月以上の回収期間となっており、斯業界における売掛金回収効率は低い状態となっています。
 総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位 層平均0.2回、全体平均0.4回、上位層平均0.7回、最上位層平均1.0回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

 過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、近年の水準は10年前よりも低下している様子が表れています。近年は全体平均では3%台、最上位層平均では13%台での推移となっています。一方で、最下位層平均では、常にマイナス値での推移となっており、売上高総利益段階で赤字化している企業が多いことが窺えます。
 2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ13.9%、3.4%、-7.9%と、低調な採算状況が続いています。

図3
図3

 売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-7.9%、下位層平均-2.1%、全体平均3.4%、上位層平均9.1%、と全体平均を境に採算性の良否が分かれている様子が窺えます。
 総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-1.6%、全体平均1.3%、上位層平均3.6%、最上位層平均6.7%となっており、下位層では赤字企業が多く収益効率が非常に低い様子が表れています。

図4
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自社のお取引先について信用調査を行った際、この業界の状況と比較してみましょう。

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