第26回 中国における与信管理:業界分析③機械工業

第26回 中国における与信管理:業界分析③機械工業

今回は業界分析の第3弾として「機械工業」について見ていきたいと思います。「機械工業」とは、国民経済の各産業部門が必要となる機械設備を製造し、先進技術を持つ機器を提供する工業部門です。機械工業には、ⅰ金属製品製造業、ⅱ汎用設備製造業、ⅲ専用設備製造業、ⅳ自動車製造業、ⅴ鉄道・船舶・航空宇宙・その他輸送設備製造業、ⅵ電気機械・機材製造業、ⅶ器械・計器製造業等が含まれます。

図1
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1.安全性

過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は上昇傾向で推移しています。最上位層平均は、2011年から2013年にかけて大幅に低下したものの、その後は50%台に回復し維持しています。最下層平均においては、2013年に20%台に達したものの、その後は15%前後での推移を続けております。
 自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30%、全体平均40%、上位層平均45%と業界内での差が比較的小さい様子が窺えます。
また、当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均64.6%、全体平均78.2%、上位層平均86.5%と一般的な水準に収まっており、業界内の差が比較的小さい様子が窺えます。

図2
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2.資産効率

過去10年間における、斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は2010年に長期化したものの、その後は概ね安定的に推移しています。最上位層平均においては、2011年から2013年にかけて長期化し、その後は70日前後での推移となっています。一方、最下位層平均は変動が大きく、225日から600日と幅が広い上に、回収に6カ月以上を要しているなど、回収効率が非常に低い様子が表れています。
2017年の斯業界における当該指標の最下位層平均は600日と、2016年に続き過去10年間で最長の水準となっています。

図3
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売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均164日、全体平均116日、上位層平均103日と、斯業界全体における売掛金の回収効率は非常に低い状態となっています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.4回、全体平均0.5回、上位層平均0.7回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。

3.収益性

過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は10%前後で安定的に推移しています。最上位層平均においては、2013年に落ち込みを見せたものの、2014年には急回復し、その後は30%前後で推移しています。一方、最下位層平均は、常にマイナスでの推移が続いており、採算性の低さが表れています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ27.9%、10.4%、-3.2%となり、収益性の有効な推移が窺えます。

図4
図4

売上高総利益率は、数値が高いほど売り上げ利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均が-3.2%、下位置平均4.9%、全体平均10.4%、上位層平均15.5%と、業界内における採算性の良否がはっきりと分かれている様子が窺えます。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均-7.9%、下位層平均0.4%、全体平均3.3%、上位層平均5.2%となっており、最下位層に赤字企業が多く、下位層の収益効率が低い様子が表れています。
 自社のお取引先について信用調査を行った際、この業界の状況と比較してみましょう。 

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