第18回 中国における与信管理ルールの構築①指標

第18回 中国における与信管理ルールの構築①指標

中国に進出している日系企業はここ数年、中国資本企業との取引の開始、増加の傾向にあります。一方で、取引の適正判断や定期的な見直しなど、与信管理規程の作成、ルール・体制の構築・運用が進んでいるか?というと、まだそこまでは進んでいないというのが現状のようです。
 取引の開始、増加のためにまず企業が優先して割ける経営資源はどうしても営業に向けられがちです。しかし、営業が頑張って注文をとって売上を上げても、最終的にその代金が回収できなければ、返って大きな損失を被ってしまいます。回収リスクの軽減化を図るために、与信管理規程の作成、ルール・体制の構築は必要不可欠ですが、今回はそのために必要な2つの指標(物差し)と設定のポイントについてご案内します。

1.信用を判別する社内格付

社内格付とは、取引先を信用状態に基づいてランク分けして管理することです。ランク分けをどこまでするかは自由ですが、運用を考えると5~6ランク程度が現実的でしょう。その上で、取引先を比較可能にするため統一的な基準で評価し、簡潔な記号・数字で表示・分類し、なおかつ、与信管理における格付の評価基準は、あくまで取引先の支払能力=倒産の可能性に力点を置くべきでしょう。単純に企業の規模や社歴、知名度、イメージで判断してはいけません。
 社内格付を付与するポイントとして次の3つに注意してください。
①客観性・・・誰が評価しても同じ格付になる
②分かり易さ・・・社内全体に浸透させる
③管理レベル・・・効率的に取引先を管理する
 社内基準を統一するために、できるだけ①客観的な基準で判断しましょう。基準の裏付として倒産確率などを用いると尚良いです。
 社員全員が社内格付の定義を理解して運用できるよう、②容易に把握できる表現にしましょう。
 格付毎の管理手法を定めることで作業が明確化され、③与信管理の効率化に繋がります。
 定量分析・定性分析に外部評価などを加味し、取引内容なども勘案して最終的な社内格付とします。このときのポイントは、取引先の支払能力=倒産確率です。
リスクモンスターの『RM格付』は長年日本で培った分析ノウハウをもとに中国の財務諸表の特徴などを勘案して付与されており、定量・定性分析と倒産確率によって導き出されていますのでそのままご活用頂けます。

2.『必要』かつ『安全』な与信限度額

 与信限度額とは、対象の取引や企業に対して、自社が受容できる損失の最大額です。裏返せばいかなる時点においても超過してはいけないものです。
与信限度額設定のルールとしては『必要』かつ『安全』な限度額の設定です。与信限度額を設定する上で、ポイントとなるのは以下の3点です。
①基本許容金額・・・貸倒による致命傷を回避するための自社の財務体力に応じた許容額
②売込限度金額・・・撤退不可能となるリスクを回避するための自社のシェアを考慮した限度額
③決裁限度金額・・・社内ルール違反リスクを回避するための自社内決裁ルールに応じた限度額
 多額の貸倒れ(「焦付き」ともいいます)により容易に回復できない致命傷を負うと自社経営に大きな影響を及ぼします。それを回避するために自社の資本力や資金の回転特性などを勘案し相手の信用力に応じてリスクに挑戦できる与信限度の上限を①で設定します。
 取引先に占める取引シェアが高くなると、その取引先に資金不足などの問題が生じた場合に、取引先から支払猶予を要請されて与信額が増加したり、取引を中止しようとしても撤退も容易でなかったりと、せっかく情報収集を行っても対策が取れなくなる危険性があります。それを回避するため取引先の格付や規模に応じて貴社にとって与信可能な取引シェアを算定し、②で与信限度額を調整します。
 財務体力や取引シェアに余裕があっても、社内ルールを逸脱した与信限度の目安を提示すると、与信を行う現場部署、担当者が混乱します。そこで、社内ルールに合わせて③で調整します。
 ①~③の金額を算出し、その中でもっとも小さな金額を与信限度額として設定することで、その取引先に対して『必要』かつ『安全』な与信限度額が決定されます。
 リスクモンスターではこの度、中国企業信用調書の中に『RM与信限度額』の算出機能を追加しました。
1で設定した社内格付と、2の設定した与信限度額を絡めることで、与信管理をより効率的、かつ、効果的に運用することが可能になります。

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