所属分類: 与信知識コラム 更新日:2021.06.28
今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は軽工業です。軽工業は、一般消費財を生産する工業部門です。軽工業には、ⅰ 塩製造業、ⅱ 酒・飲料・精製茶製造業、ⅲ 紡績服装・服飾業、ⅳ 皮革・毛皮・羽毛関連製品・靴製造業、ⅴ 家具製造業、ⅵ 造紙・紙製品業、ⅶ 印刷業・記録媒体複製業、ⅷ 文化教育・工芸美術・体育・娯楽用品製造業、ⅸ その他製造業等が含まれます。
2017年において、斯業界で最も市場規模（売上高）が大きな業種分類は、紡績服装・服飾業（2兆1,904億元）であり、続いて酒・飲料・精製茶製造業（1兆7,637億元）、文化教育・工芸美術・体育・娯楽用品製造業（1兆6,568億元）、造紙・紙製品業（1兆5,203億元）、皮革・毛皮・羽毛関連製品・靴製造業（1兆4,693億元）の順となりました。最も市場規模の大きい紡績服装・服飾業で、全体の20％程度の市場規模となっており、比較的分散している様子が表れています。推移としては、いずれの業種においても、市場規模は拡大しており、それに伴って税引前当期利益も拡大している様子が窺えます。
図１
過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は40％前後で安定的に推移しています。最上位層平均は、2014年に大幅に低下推移となったものの、依然として50％台を維持しています。最下位層平均においては、概ね15％前後での推移を続けています。
自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均30％、全体平均40％、上位層平均45％と業界内の差が比較的小さい様子が表れています。
当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均55.5％、全体平均81.4％に対して、上位層平均118.0％、最上位層平均148.3％と上位層における水準が高くなっています。斯業界では、上位層における資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。
図２
過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は安定的に推移しており、50日前後の水準を維持しています。最上位層平均においても同様に安定推移しており、17日～18日で推移しています。一方で、最下位層平均は変動が大きく、2008年から2012年まで急激に短期化が進み、その後は120日～189日での推移となっています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ17日、45日、124日と比較的良好な水準となっています。
図３
売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均68日、全体平均45日、上位層平均26日と、斯業界における売掛金の回収効率は比較的良好な水準にあることが表れています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用し、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.3回、全体平均0.4回、上位層平均0.9回となっており、全体平均以下の層において、資産効率が低い様子が窺えます。
過去10年間における斯業界の売上高総利益率は、全体平均は15％前後を推移しながらも長期的にはやや低下傾向で推移している様子が窺えます。最上位層平均においては、2012年をピークに低下が続いていましたが、2016年から回復傾向にあります。最下位層平均では、低水準ながらプラス推移を維持しています。2017年の斯業界における最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ28.8％、13.6％、3.8％と、やや改善傾向で推移しています。
図４
売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均3.8％、下位層平均7.9％、全体平均13.6％、上位層平均19.6％、最上位平均28.8％と、最下位層平均でも黒字を確保しており、業界全体で採算を確保できている様子が表れています。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均2.4％、全体平均4.5％、上位層平均6.3％、最上位層平均9.2％となっており、最下位層を除いて比較的良好な収益効率を有していることが窺えます。
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