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第84期 AWSも苦戦!中国のパブリッククラウドの現状

所属分類: ハイテク・最先端技術 更新日:2022.04.22

執筆者:利墨(上海)商务信息咨询有限公司  倉田 瑞穂

読者の皆さんは「AWS」と聞いてどのようなサービスかわかりますでしょうか。「パブリッククラウド」とも呼ばれ、「企業、個人など利用したい人が必要な時に必要なだけ自由にサーバーやネットワークリソースを使える」サービスです。

中国を陰で支えるパブリッククラウド

その利便性から、日本でも多くの企業が従来のデータセンターでの自社サーバーから、パブリッククラウドへ移行しています。中国でもその爆発的な経済成長を影で支えているのがこのパブリッククラウドです。スピード、費用対効果の面で多くの中国企業に支持され、BATH※もこのサービスを利用、提供することで大きく成長しました。そんな中国でのパブリッククラウド市場の成長と今後についてお話しいたします。

※BATHとは、中国を代表するIT企業であるBaidu(バイドゥ)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)・Huawei(ファーウェイ)の頭文字をとったもの。

中国のパブリッククラウドの成長率

2015~2021年の実績と2022~2025年の予測のパブリッククラウドの市場規模ですが、2015年の103億元(約2,060億円)に対して、2021年は2,330億元(約2兆6,940億円)で直近6年で約22倍も成長しています。
 今から3年前の2019年にこれまでのプライベートクラウドとパブリッククラウドの市場規模が逆転し、それ以降はパブリッククラウドの市場規模がより伸び続けています。また今後1年(2022年、2021年)でも438億元(約8,760億)の拡大を続けると予想され、今後も高い伸びが期待できます。ちなみに日本のパブリッククラウドの市場規模(2021年)が1兆円と言われているので、中国のパブリッククラウドの市場規模は日本の約2.5倍です。

赤:プライベートクラウドの市場規模

黄色:パブリッククラウドの市場規模

出典:艾媒咨询のデータ:https://www.iimedia.cn/c400/84311.html

中国の主要なパブリッククラウド業者

中国の主要なIT企業のBATHが売上とシェアの上位を占めています。特にAlibabaは全体シェアの3~4割と圧倒的なシェアとなっています。弊社も一部のサービスでAlibabaのパブリッククラウドを利用していますが、他社より安く、APIでのサービス連携、そしてサポートもチャットを中心に充実しており非常に満足しております。

2021年第3四半期のパブリッククラウド市場規模

順位 会社名 金額:元(円) シェア
1 阿里巴巴(Alibaba) 137億元(2,740億円) 38.24%
2 腾讯(Tecent) 39億元(780億円) 10.92%
3 华为(HUAWEI) 38.6億元(772億円) 10.74%

2021年第3四半期のパブリッククラウド市場シェア

出典:IDCフロンティアのデータ:https://www.yuntue.com/post/35889.html

中国のパブリッククラウド特徴

市場の特徴

・中国のパブリッククラウド市場の特徴として、世界的なシェアの1位と2位のAWS(Amazon)、Azure(Microsoft)のシェアが低い(それぞれ7.23%、2.63%)ことがあげられます。
 これは、外資系の企業がデータセキュリティの関係で様々な制限があり、その制限を克服するのに時間がかかったことが大きく、その反面AlibabaやTencentなどの中国のトップのIT企業が圧倒的な資本力でシェアを一気に拡大したためです。

・コスト面でプライベートクラウドより優位性があるのは他国のパブリッククラウドと同様です。

・またAlibabaに限れば、アジア向けのリージョンに優位性があり、アジアNo1のシェアとなっています。

上位3製品の特長

順位 サービス名 特徴
1 Alibaba Cloud(Alibaba)

・中国で最大のシェア持つだけでなく世界的に見てもAWS、Azureに続く第3位のシェアを持つ。

・2012年にサービス化で中国のパブリッククラウドの先駆者。

・データベースは主要なオープンソース(MySQL、PostgreSQL)、NoSQL、ビックデータ対応の製品もありOracleのデータベースサポートが不足している。

・セキュリティはWAF、コンテンツフィルタリング、データ暗号化、DDoS保護、データリスク制御などの数十のセキュリティ製品を開発。

・CDNは公式数値1500以上のグローバルノードで、帯域幅の予約は120Tと非常に高パフォーマンスでDNSは国内最大のDNSプロバイダーサービスを買収しその他のサービスも非常に優秀。

2 Tencent Cloud (Tecent)

・2013年にサービス化。

・標準のクラウドサーバー、GPUクラウドサーバー,FPGAクラウドサーバーなどの基本的なコンピューティング機能の提供に力を入れている。

・データベースは主要なオープンソース(MySQL、PostgreSQL)+独自のTDSQLあり。ただし移行サービスの提供がない。

・ビデオのライブブロードキャスト、エンターテインメント、ゲーム業界で強力なテクノロジーを備えている。

3 Huawei Cloud(HUAWEI)

・政府系サービスシステムに強みがあり。

・独自OSやスマートフォン端末開発もしており唯一のend-to-endの企業である。

・上部のアプリケーションに触れない下部のデータに触れないことスローガンのもと情報セキュリティを最高水準まで強化している。

出典:星云互联:http://www.starsdns.cn/news/list.asp?newsid=40

   知乎:https://www.zhihu.com/question/50841976

今後の中国のパブリッククラウドの市場について

・「中国のパブリッククラウドの成長率」でも述べたように中国の経済成長に合わせて今後もパブリッククラウド市場規模は拡大していくと予想されます。

・昨今の様々な中国特有の事情からAlibabaの1強体制は少しずつ弱まっていくと予想されるが、引き続き資本力とローカル企業の優位性で中国のITトップ企業がシェアをキープし続けます。(Alibabaは2020年から2021年でシェアを3.5%落としている)

・中米対立の影響にも左右されますが、世界的に資本力のあるAWS(Amazon)、Azure(Microsoft)も少しずつシェアを伸ばしていきます。(ここ1年でそれぞれ0.5%、0.2%のシェア拡大)

今後も中国の高い経済成長の継続にはパブリッククラウドの進化や成長が欠かせません。筆者もITエンジニアの立場から中国のパブリッククラウドを効果的に活用し、自社の成長につなげたいと思います。

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