中国のオンライン動画・動画共有サイトについて

執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎2016/04/20

中国に来て驚いたのが、オンライン動画・動画共有サイトのコンテンツが質・量ともに豊富な点です。ほぼ全ての中国ドラマや映画が閲覧できるだけでなく、日本や海外の映画やテレビ番組も不自由なく閲覧できます。しかも、無料です。また、地下鉄などの公共機関では、多くの若者がスマホ画面を片手にドラマや映画を見ています。会社でも、昼休みにイヤホンをつけながら、スマホでバラエティ番組を見ており、若者のライフスタイルに浸透しています。

オンライン動画市場と収益モデル

項目 2015年 前年比 2018年
オンライン動画市場(億元) 401 161% 1,103
オンライン動画広告市場(億元) 232 152% 549
(参考)オンライン広告市場(億元) 2,097 136% 4,105
有料会員市場規模(億元) 51 370% 188
有料会員数(万人) 2884 364% 8,948

(iResearch調べ)

2015年のオンライン動画市場は前年比161%の401億元(6,817億円)、2018年には1,103億元見込です。オンライン動画の広告市場は前年比152%の232億元(3,944億円)、2018年は549億元見込でおり、成長拡大中です。日本のオンライン動画広告市場も同程度の成長率ですが、2015年は約500億円と中国の1/8程度です。
 収益モデルとしては広告収入が全体収益の半分以上占めておりますが、2015年からは有料会員収入が増加しております。
 動画サイトの広告の出し方が日本と異なり、見たい動画コンテンツを無料で見る際には1分~2分近くの動画広告を見る必要があります。個人的には、ドラマや映画が無料で見ることができるため、動画広告を見ることは苦痛ではありません。また、動画を停止した場合にも静止画広告が表示されます。

優酷動画サイト画面

土豆動画サイト画面

有料会員数は2015年末に2,884万人で、全ユーザーのうち5.7%の浸透率ですが、2018年には8,948万人、16.5%の浸透率になる見込です。ユーザーは月20元(340円)程度を支払い、有料会員になると広告が非表示になり、更に有料会員限定の動画コンテンツ(最新映画や海外人気映画ドラマなど)が閲覧できます。80年後(パーリンホウ)と言われる25才から30才の若者が多く、全有料会員の35%を占めておりますが、不正と認識しながら、有料会員IDを友人と共有しているユーザーもまだまだ多いようです。
 人気の動画コンテンツとしては、上から順に「海外映画」「中国国内映画」「海外ドラマ」「中国国内TVドラマ」となっています。
 2015年の1ユーザーあたりの広告市場(ユーザー広告ARPU値)は45元(765円)、有料会員の平均利用料は178元(3,026円)です。

主要動画サイト

中国ではYoutubeにアクセスができないため、中国独自の動画サイトが乱立しています。動画の画質は良く、ダウンロードも可能です。

①優酷(youku)/ 土豆(tudou)

数年前までは、この2つは動画サイトNo1とNo2でしたが、2012年に合併し、「優酷土豆」という会社になりました。中国動画サイトでコンテンツが豊富な理由として、中国国内テレビ局や海外からコンテンツ放送権を大量に購入しているのですが、多額のため、資金負担が非常に大きく、その負担を減らすために合併したようです。ただし、合併後も収益化に苦戦しており、直近では年間2億米ドル程度の赤字でした。米国NASDAQに上場していましたが、昨年末にアリババに買収され、上場廃止になりました。

②捜狐(sohu)

元々はYahooのようにポータルサービスを提供していた捜狐(sohu)が、動画サイトにも参入し、スポーツ番組や自社制作ドラマなどに強みがあります。他サイトも同様ですが、外部からのコンテンツ放送権費用負担を下げるため、自社ドラマ制作に力を入れています。
 捜狐(sohu)は米国NASDAQに上場しており、15年12月期の売上は19億米ドルもありますが、3期連続赤字(純損失)です。

③愛奇芸(iQIYI)

2010年に設立された新しい動画サイトですが、近年では成長が著しく①「優酷土豆」を超えて中国最大級とも言われております。昨年は「盜墓筆記」という人気小説を自社制作でドラマ化し、大ヒットしたことから多くのユーザーを集めました。

④ビリビリ動画(Bilibili)

動画共有サイトで、日本のアニメやテレビ番組のコンテンツが多く、若いユーザーが多いのが特徴です。他のサイトと異なり、動画を見る前の広告がありません。弾幕という動画にコメントし共有するのが人気で、日本のニコニコ動画に似ています。非上場の会社ですが、騰訊(テンセント)から出資を受けており、会員登録数は2千万ユーザーもあります。ただし、広告収入が無く、有料会員もニコニコ動画ほど多くないため、収益化に苦戦しているようです。

アニメなどは日本のテレビ会社から放送権を買い、合法的に配信しているようですが、日本のバラエティ番組や映画の多くは、ユーザーが不正なアップロードをしているようです。

ビリビリ動画サイト画面

上記以外にも動画サイトはあり、また最近は中国テレビ局がネットで独自配信を開始し、競争が激化しています。また、中国動画サイトの多くの動画コンテンツは、日本からはアクセスできないようです。中国に来られた際は、一度中国の動画サイトをご覧ください。

以上

※参考データ
・iResearch「中国在線視頻用戸付費市場研究報告2015年」

※ 1元=17円で計算しております。
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