第15回 中国での債権保全〜連帯保証の活用と注意

第15回 中国での債権保全〜連帯保証の活用と注意

売掛債権の回収をいかに確実に行うかは、中国においてビジネスを進めるにあたり非常に重要なポイントです。債権回収ができなくなってから対策を講じても、取引先には財産がなく無い袖は振れない状態になっているケースも少なくありません。そこで取引に入る際または取引が拡大するような場面において、何らかの担保を取得しておくことが重要になってきますが、その中でも今回は連帯保証を取り上げたいと思います。
連帯保証は、取引先の代表者や関係会社から取得することができる場合が多いと思いますが、取引先自身の財産ではなく、連帯保証をした第三者の財産を担保にすることから、仮に取引先が倒産した場合であっても第三者から回収ができるというメリットがあります。
以下においては、第三者から連帯保証を取得するにあたり、注意する必要があるいくつかの点をご紹介したいと思います。

1.書面による契約

連帯保証は、必ず書面によって行わなければなりません。すなわち債権者は保証人との間で保証契約を書面で締結する必要があります。保証契約においては、①保証される主債権の種類、金額、②債務者が債務を履行する期限、③保証の方式、④保証が担保する範囲、⑤保証の期間及び⑥その他の必要事項を記載する必要があるとされています。実務上は保証契約として二者間の契約にするのではなく、債権者と債務者の主契約に上記の内容を盛り込んだうで、保証人も交えた三者間契約にするケースも少なくありません。

2.保証方式の約定

中国法上の保証には一般保証と連帯保証の2種類があります。一般保証は連帯保証と異なり、保証人が、債権者から請求があった場合に、まず主債務者に請求し主債務者の財産に執行するよう抗弁することができます。債権者にとっては連帯保証の方が使い勝手がよく有利となります。この点、保証契約に保証の方式について合意がない、または約定が不明確な場合、日本法と異なり連帯保証とみなされます。債権者にとっては保証方式の合意がない場合でも連帯保証となり有利ですが、一般保証の保証人になろうとする場合には、保証方式を明確に規定しておく必要があります。

3.保証期間

保証契約においては、日本法と異なり、保証期間を定めなければなりません。連帯保証の場合、債権者が、保証人に対して、保証期間の間に保証責任の履行を請求しない場合、保証人の保証責任を免れることができます。仮に保証契約において、保証期間の約定がない、または約定が不明確である場合、保証期間は、主債務の履行期限到来日から6ヶ月とされます。すなわち、債権者は、主債務の履行期限が到来した日から6ヶ月以内に保証人に対して、保証責任を主張しなければ、保証人に対する権利が消滅することになります。
なお、保証契約における保証期間を、主債務の原本及び利息の全額が弁済されるまでと約定したような場合、保証期間の約定は不明確であるとみなされる点に注意が必要です。ただし、この場合のみなし保証期間は、主債務履行期限到来日から6ヶ月ではなく2年間となるとされています。

4.物的担保と保証が併存する場合

同一の債権について、物的担保と保証が併存する場合、担保の行使にあたり法定の優先順位に従わなければなりません。すなわち、債務者が自ら物的担保を提供しているような場合、債権者はまずその物的担保を実行しなければなりません。したがって、第三者から連帯保証を取得した場合でも、債権者の工場に対する抵当権等の物的担保があれば、債権者は、まず当該抵当権を実行する必要があります。また、物的担保を提供しているのが第三者である場合、債権者は物的担保の実行でも、保証人に対する請求でも、いずれでも行うことができます。なお、いずれの場合でも、物的担保の設定者または保証人は、物的担保が実行された後、または保証責任を履行した後、債務者に対して求償することができます。

上記のとおり、連帯保証は物的担保と異なり、きちんとした書面さえ整えれば、登記等の手続が不要である点で、比較的使いやすい担保であるといえます。取引先と新たに取引を開始する場合や一定の与信枠を超過するような場合に、取引先の代表者や関係会社の連帯保証を取得されることを検討、交渉してみることが、いざというときの回収につながるのではないでしょうか。

監修:大江橋法律事務所上海事務所  首席代表 松本亮弁護士

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